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ウグイス:生息環境の幅が広いにもかかわらずシカの影響で最初に減少

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 ウグイスは南西諸島から北海道まで,標高では低地から高山まで,環境も住宅地から森林まで,さまざまな場所に生息する日本で最も分布の広い鳥です。全国鳥類繁殖分布調査では,1970年代,1990年代,2021年代すべての調査においてメッシュ数は不動の1位です( 植田・植村 2021 )。そんなウグイスですが,近年は,シカの増加とその食圧による藪の減少により,各地で個体数が減少しています。聞き取り調査の調査地でも,秩父では調査開始前にほぼいなくなってしまっており,山中湖でも,近年,記録が激減しています(図1)。 図1.山中湖のウグイスの記録率の経年変化。近年急激に減少し,それにあわせてウグイスの托卵するホトトギスも定着しなくなってしまった。 シカの食圧の影響を受ける種には,コルリ,コマドリ,ムシクイ類,ソウシチョウなどほかにもいますが,最初に影響を受けるのは,ウグイスであることが多いです。前述したように生息環境の幅が広いのに,シカの食圧に脆弱なのは不思議な気がします。もしかすると,ほかの種は生息環境の幅が狭いだけに,シカの食圧で環境が悪くなっても,ほかに行く場所がないので,我慢して生息するのに対して,ウグイスはほかにも行ける場所があるので,あっさりと移動してしまうのかもしれませんね。 さえずりの季節変化 ウグイスのさえずりは山中湖では4月中旬から,志賀高原では4月中下旬から活発になります(図2)。ウグイスのさえずりの開始時期は冬からの積算気温である程度推測できるので( 太田・植田 2020 ),気温の違いが影響しているのだと思います。 山中湖は減少傾向にあることが影響していて,活発になった後の季節変化には大きなばらつぎがありますが,志賀高原を見ると,その後は,活発なまま推移します(図2)。ウグイスは一夫多妻制で( 濱尾 2007 ),雄は一度つがった後も,次の雌を獲得しようとさえずり続けるので,このようなパターンになるのでしょう。 図2.ウグイスのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずりの聞かれる時間帯 ウグイスは早くからさえずるツグミ類などが鳴き始めてしばらくすると声がするイメージですが,その通り,日の出頃にピークになり,その後,それほど頻度は下がらず,活発なまま推移します(図3)。 図3.日の出からの経過時間とウグイスのさえずり頻度との関係(201...

ヒヨドリ:季節とともに記録率が高くなる

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 ヒヨドリはなんとなく森の主要種のような気がしていませんか? でも実際は開けた温暖な森の鳥で,標高の高い森に覆われたような場所にはあまり生息していません。そのため,聞き取り調査の調査地のうち,志賀高原や秩父ではほとんど記録されず,山中湖でのみ記録されました。ただ,近年,分布拡大が見られており( 植田・植村 2021 ),将来は志賀高原や秩父でも記録されるようになるかもしれません。なお,温暖な森の鳥なので,冬は,高標高の場所ではより記録されにくそうに感じますが,実はそうではなく,冬には秩父での記録が近年増えています。北の方で繁殖している個体が越冬のため南下してきて,そうした個体が記録されるのでしょうね。 記録頻度の季節変化 ヒヨドリは4月上旬にはあまり記録されませんが,その後,緩やかに記録頻度は上昇し,調査終了時点がピークとなりました。6月に入ると多くの鳥の記録率は下がるので,このような季節変化を示す種はあまりいません。 ヒヨドリがこういうパターンを示す種なのか,それとも山中湖の特性なのかはよくわかりません。まだ定着していないような種(たとえば秩父でメジロは現在は定着しているけれども,まだ定着していなかった調査初期の頃のメジロ)や,ほぼいなくなってしまった種(たとえばシカの影響で激減した最近の山中湖のウグイス)では,繁殖期の前半ではほとんど記録されず,後半に記録されます。おそらくほかの場所で定着できなかったり,繁殖に失敗した個体が後半にやってきて定着を試みるのではないかと思います。ヒヨドリは前述したように,寒冷な森では少ない種で徐々に増加しています。山中湖も定着はしているものの,数を増やしているような場所で,後半に,ほかの場所から個体が流れ込んできている,なんてことも生じているのかもしれません。 図1.山中湖のヒヨドリの記録頻度の季節変動(2013-2026) 記録される時間帯 ヒヨドリの記録率は日の出前が一番低く,その後,徐々に上がっていきました。 図2.山中湖のヒヨドリの記録率と日の出からの経過時刻との関係

ヒガラ・ヤマガラ・コガラ:種の特性や密度や標高がさえずり頻度に影響?

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 カラ類は標高や環境によって主要な生息種が異なります( 植田・植村 2021 )。シジュウカラは低標高の開けた林を主要な生息地にし,密度は低いものの,高標高の森林まで分布する最も分布の広い種です。ヤマガラは暖帯の森林を主要な生息地にしているため低標高の森の主要種になっていて,近年高標高の林まで分布を拡げています。志賀高原ではまだ定着していませんが,山中湖と秩父では定着していて,記録は増加傾向にあります(図1)。そしてヒガラとコガラは高標高の森に生息する種で,特にヒガラは標高の高い森では最優占種となる鳥です。こうした特性を反映して,カラ類のさえずりパターンには違いがありました。 図1.秩父と山中湖のヤマガラの記録頻度の変化 さえずりの季節変化 ヒガラは高頻度で,シーズンを通してよくさえずり,ヤマガラは最もさえずり頻度が低く,コガラは5月上中旬をピークにその後,さえずり頻度低くなるという違いがありました(図2)。そして,それぞれの種の調査地間の違いには,標高や密度が影響していそうなパターンが見られました。 ヒガラの4月上旬のさえずり頻度が志賀高原が秩父より低かったは,低温や積雪により繁殖開始時期がやや遅いのを反映していそうです。また,山中湖でほかの2か所より早い5月中旬にさえずり頻度が下がりましたが,密度が低いため,競い合ってさえずることが少なく,早めに不活発になっていくこと,そして,もしかすると,低標高のために早めに繁殖が一段落することが影響しているのかもしれません。 ヤマガラは山中湖では5月に入るとさえずり頻度が落ちました。これもヒガラの山中湖と同様に秩父よりも密度が低いため,競い合ってさえずることが少なく,早めに不活発になっていくこと,そして,もしかすると,低標高のために早めに繁殖が一段落することが影響しているのかもしれません。 コガラのさえずりが不活発になる時期が志賀高原の方が遅かったのも標高が影響しているのだと思われます。 図2.カラ類のさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずりの聞かれる時間帯 コガラは日の出時刻をピークにその後急激に低下,ヒガラは日の出しばらく後をピークに,その後は低下するものの,高頻度のまま推移し,ヤマガラは場所によって異なっていたものの,密度の高い秩父では日の出前がピークで,その後急激に低下するといった種による違いが...

カケス:無人録音では普段と違う声がよく聞かれる

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 カケスは英名がJayというだけに,「ジェー」と聞こえる声で鳴きます。また,猛禽類など様々な声を真似たりもします。 聞き取り調査では,そのほかに,「 巻き舌 」と呼ぶ声や「 コケッ音 」とか呼んでいる声が聞かれ,野外観察ではいちばんよく聞く「ジェー」という声よりもこちらの方が多く聞かれました。そしてさらに猛禽の真似を聞くことも「ジェー」という声を聞くことより多いのも特徴的でした。「ジェー」という声は人などを警戒する声で,それ以外の声は,人が近くにいないリラックスしているときの声なんですかね。ちなみに猛禽が出現すると,猛禽の真似をします。あれは,猛禽に対して気付いているぞアピールなのでしょうか? それとも条件反射? カケスの記録は志賀高原や秩父では増減傾向はありませんでしたが,山中湖では減少傾向にありました(図1)。 図1.山中湖のカケスの記録率の年変動 カケスの記録頻度の季節変化 カケスの記録率は4月中下旬がピークでその後は緩やかに低下していきました(図2)。 図2.カケスの記録頻度の季節変化(2011-2026) 記録される時間帯 カケスの記録される時間帯は場所によって異なり,志賀高原は日の出をピークに徐々に記録率が下がっていったのに対し,秩父は日の出頃が最も記録率が低く,その後,上昇していきました(図3)。山中湖では一定の傾向は見られませんでした。なぜこんなに場所によって違うのかはよくわかりません。 図3.カケスの記録頻度と日の出からの経過時間の関係

キツツキ類:増加している大型キツツキ

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 志賀高原,秩父,山中湖の調査地には,オオアカゲラ,アカゲラ,アオゲラ,コゲラが生息しています。コゲラは明確に識別できますが,ほかのキツツキ類は,アオゲラの「ピョー」という声を除けば,鳴き声もドラミングも,オオアカゲラっぽいとかは, 大まかにはわかるのですが ,完ぺきな自信はないので,コゲラ,大型キツツキの区分でまとめました。なお,各調査地での記録率は,コゲラには明確な傾向はなく,大型キツツキは秩父と山中湖で増加傾向にありました(図1)。大型キツツキの増加は,全国鳥類繫殖分布調査でも示されています( 植田 2023 )。 図1.大型キツツキ類の記録率の年変動 記録頻度の季節変化 コゲラも大型キツツキも4月は記録頻度が高く,その後,徐々に低下しました。大型キツツキは最後までその低下が続いたのに対し,コゲラは6月の下旬に頻度が再び高くなった点が異なっていました(図2)。断言はできませんが,この時期は3羽以上の声がしたり,巣立ちビナっぽい感じの声が混ざるなど家族群かな,と思われるコゲラがその頃に聞かれたので,そのために鳴くことが多くなり,記録が増えたのかもしれません。 図2.コゲラと大型キツツキの記録頻度の季節変化(2011-2026) 記録される時間帯 コゲラは日の出前後はほとんど記録されず,日の出後しばらくしてから,記録されることが増え,その後安定しました(志賀高原のみピークを付けた後減少)。それに対して,大型キツツキは日の出直後あたりをピークに,その後減少するなど,コゲラよりも早くから記録されました(図3)。 図3.コゲラと大型キツツキの記録頻度と日の出からの経過時間の関係 コゲラの記録にドラミングが占める割合は低く,全体では3.6%に過ぎませんでしたが,大型キツツキの記録にドラミングが占める割合は高く,日の出直後には70%を超えており,記録率と同様に,その後,低下していきました(図4)。コゲラのドラミングは, か弱い音 で,遠くまでは聞こえません。そのため,コゲラドラミングは聞き落としており,大型キツツキは記録できているなど,その特性の違いが,ある程度は記録頻度の時間変化に影響してしまっているかもしれません。 図4.記録にドラミングが占める割合の大型キツツキとコゲラの違い

アオバト:全調査地で増加傾向に

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 「オアオ~ オアオ~」何とも不思議な 特徴的な声 を聞く機会が増えています(図1)。この増加は全国的なもので,全国鳥類繁殖分布調査の結果でも1970年代,1990年代,2010年代と分布を拡げています( 植田・植村 2021 )。 図1.各調査地のアオバトの記録率の変変動と秩父の記録頻度の年変動 さえずりの聞かれる時期 アオバトは秩父では,調査初日の4月1日から聞かれることもありますが,4月中旬以降から聞かれることが多く,4月16日の初認が最も多く記録されています。その後,徐々に聞かれる頻度は多くなり,5月下旬から6月上旬がピークとなっていました(図2)。 小鳥類よりも遅い時期まで活発ですが,キジバトのようにシーズンを通して活発というわけではないようです。アオバトの繁殖生態はよくわかっていませんが,キジバトのように何度も繁殖というわけではないのかな,と思います。 図2.秩父のアオバトのさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずりの聞かれる時間帯 アオバトは,日の出前にはあまり鳴いておらず,その後活発になり,ピークになったあと不活発になっていきました(図3)。日の出後のピークになるまでの時間は山中湖,秩父,志賀高原と標高順に早くなっていました。これに何か意味があるのか,それとも偶然なのかは,他地域の状況がわかれば見えてくるかもしれません。 図3.アオバトのさえずりの活発さと日の出からの経過時間との関係

キジバト:季節を通じて低下しない さえずり頻度

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 キジバトは北海道から沖縄まで,また,環境も都市から農地,森林まで幅広く生息する日本で最も分布の広い鳥の1つです。全国鳥類繁殖分布調査では,記録メッシュ数がウグイス,ハシブトガラス,ヒヨドリに次ぐ4位でした( 植田・植村 2021 )。 聞き取り調査の調査地でも,秩父では記録数がやや少ないものの,3地点すべてで記録されました。 さえずりの聞かれる時期 キジバトの記録頻度は春先こそやや低いものの,その後は同じ程度で調査終了まで推移しました(図1)。キジバトは多くの場所では留鳥ですが,北日本では夏鳥です。聞き取り調査地はすべてそれなりに標高の高い場所なので,北日本と同様に冬はいない漂鳥的な生息状況で,春先の頻度が低いのかもしれません。 また,キジバトは繁殖期の長い鳥で,くり返し繁殖をし,1年間に8回繁殖を試みた個体もいるそうです( 亀田 2006 )。こうした生態をもつため,調査期間を通してさえずり頻度が落ちなかったのだと思われます。 図1.山中湖のキジバトのさえずり頻度の季節変化(2013-2026) さえずりの聞かれる時間帯 キジバトは日の出頃はあまり鳴いていませんが,その後,徐々に頻度が上がっていき,日の出20-30分後がピークでその後,徐々に不活発になっていました。小鳥類と比べると,さえずりが活発になるのは遅い傾向にあります。 また,志賀高原と山中湖を比べると志賀高原の方がピークが遅い傾向にありました。こうした傾向はいろいろな種でも見られています。感覚的には標高が高い方が日の出後の明るくなる速度が速いような気がするので,逆なら納得がいくのですが,不思議ですね。キジバトは志賀高原の方が少ないので,それが影響している可能性がありますが,志賀高原の方が密度の高いヒガラやウグイスのような種でもそうしたパターンが見られるので密度ではないような気がします。気温とかですかね。いろいろ想像しながら観察をしていきたいと思います。 図2.キジバトのさえずり頻度と日の出からの経過時間との関係