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クロジ:日本海側に多い森のホオジロ

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 クロジは日本海側に多い森林性のホオジロです。日本海側では増加していますが( 植田・植村 2021 ),藪を好む習性もあり,太平洋側ではシカの食圧の影響もあって減少しています。秩父調査地よりやや高標高の位置にある突出峠では,2016年までは記録されていましたが,2017年以降は記録されなくなったしまいました。 さえずり頻度の季節変化 志賀高原のクロジは4月中下旬に初認されました(図1)。その後,5月上旬にかけて,さえずり頻度は増加し,5月中下旬に低下したのちに,再び増加しました。 図1.志賀高原のクロジのさえずり頻度の季節変化(2022-2026) さえずる時間帯 クロジは日の出前から日の出時刻に最も活発にさえずり,その後徐々に減少していました(図2)。 図2.志賀高原のクロジのさえずり頻度と日の出からの経過時刻の関係

カワラヒワ:開けた場所の鳥は日の出時刻にこだわらない?

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 カワラヒワは草の種子を食べるため,草の多い開けた場所で採食し,それに隣接する疎林で繁殖する鳥です。そのため,秩父のような森林におおわれた場所では記録されず,山中湖でのみ記録されました。 記録頻度の季節変化 カワラヒワの記録は調査がはじまる4月上旬をピークに,その後減少していきました。おそらく調査開始時期より早い時期にピークがあるのだと思われます(図1)。 図1.山中湖のカワラヒワの記録頻度の季節変化(2013-2026) 記録される時間帯 カワラヒワは日の出前にはほとんど記録されず,時間経過とともに記録率は高くなりました(図2)。ヒヨドリ,コムクドリ,ホオジロなど開けた場所に生息するほかの鳥も,こうしたパターンを示していました。日の出から時間が経つと鳴きだし,さえずりを打ち消してしまうエゾハルゼミが開けた場所にはいないとか,日の出直後に鳴かなくても良い理由があるのかもしれません。 図2.山中湖のカワラヒワの記録頻度と日の出からの時刻の関係

ルリビタキ:活発にさえずり続ける鳥,しかし急に鳴かなくなる時期も

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 ルリビタキは亜高山帯の優占種です。志賀高原では,たくさんの個体がさえずって,声が反響して個々のさえずりの聞き取りが難しいほどです。 さえずり頻度の季節変化 4月上旬の志賀高原は積雪に覆われているためか,年によってはルリビタキの声がまだ聞かれないことがあります。そんな年でもまもなく,ルリビタキが活発にさえずるようになり,その活発さはシーズンを通して維持されます(図1)。ただ,5月下旬から6月上旬にぱったりルリビタキが鳴かなくなる日が何日も続くことがあります。ヒナへの給餌で忙しくて鳴かないのでしょうか? この時期のルリビタキに何が起きているのか知りたいところです。 図1.志賀高原のルリビタキのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずる時間帯 ルリビタキは日の出前から日の出1時間後まで活発にさえずり続けていました(図2)。 図2.志賀高原のルリビタキの記録頻度と日の出からの経過時刻の関係

キビタキ:密度でさえずりパターンが異なる?

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 キビタキは夏鳥でもっとも分布の広い鳥で,全国鳥類繁殖分布調査の2010年代の調査では,記録メッシュ数で7位でした( 植田・植村 2021 )。1970年代と1990年代には上位10位には入っておらず,分布も拡大しています。 聞き取り調査でも3か所すべてで記録されており,いちばん標高の低い山中湖でもっとも高密度に生息していました。 さえずり頻度の季節変化 キビタキは標高のもっとも低い山中湖には4月中旬に渡来し,秩父には4月下旬,志賀高原には4月下旬か5月上旬に渡来しました(図1)。渡来後すぐに活発にさえずるようになり,密度の高い山中湖では調査終了までその活発さを維持しましたが,密度の低い秩父では6月に入ると,志賀高原では6月後半には,さえずりが不活発になっていきました。 図1.各調査地のキビタキのさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずる時間帯 さえずる時間帯にも密度は影響するようで,山中湖では日の出前から活発にさえずっていましたが,秩父や志賀高原では日の出30分後にかけて,徐々にさえずりは活発になりました(図2)。 図2.キビタキのさえずり頻度と日の出からの経過時刻の関係

コルリ:シカの影響で秩父ではいなくなった

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 コルリは,チッチッチッ・・・・・ チーチュビチーチュビチなどと聞こえる声でさえずります。チッチッチッ・・・という前奏は他の鳥にはない特徴で,ここで簡単に聞き分けることができます。しかし,距離が遠いと前奏は聞こえにくいので,「前奏がないからコルリじゃないね」とは言えないので,識別の際には注意が必要です。 このコルリの記録が秩父では激減し,2020年代になってからは,年に数回記録される程度になってしまいました(図1)。藪に生息するコルリの生息地がシカの食圧でなくなってしまったのが原因と思われます。同様にウグイスもいなくなっていますが,ウグイスの方がかなり早くいなくなりました。コルリが最後までいなくならない傾向は他地域でも認められており( 植田 2023 ),コルリの方がシカの食圧に強いのかもしれません。ただ,この残っている期間の繁殖成績がきわめて低いなど,生息しているだけで大きく影響を受けていて,強いわけではない可能性もあります。 図1.秩父のコルリの記録率の年変動 さえずり頻度の季節変化 志賀高原へはコルリは4月下旬から5月上旬に渡来します。その後さえずりは活発になっていき,6月上旬をピークに低下していきました(図2)。 図2.志賀高原のコルリのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずる時間帯 コルリはややさえずりの開始時刻の遅い種で,日の出前の時間帯から日の出30分後に向けて徐々に活発になっていきます。そしてその後安定的に推移していました(図3)。 図3.志賀高原と秩父のコルリのさえずり頻度と日の出からの時刻の関係

アカハラ:低標高で減少,高標高で増加?

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アカハラはやや寒冷なブナ林等の森林に生息する鳥です。調査地の中では秩父では優占種になっています。以前は山中湖にも多く生息していたそうですが,現在はほとんど記録されず,記録されるツグミ類はアカハラよりも暖かい森林に生息するクロツグミとなっています。 全国的にも寒冷な森林に生息する種が減少する傾向があり,アカハラでは低標高な場所で分布が縮小していることが全国鳥類繁殖分布調査の結果からわかっています( 植田 2023 )。また,志賀高原では年により記録されることのある鳥でしたが,2026年には,はじめて繁殖期を通して記録されました。秩父調査地に隣接する志賀高原と近い標高の突出峠では2017年から記録されるようになり,その後定着して現在は優占種となっています。志賀高原でも今後定着するかもしれません。 さえずり頻度の季節変化 アカハラのさえずりは4月中旬から活発になり4月下旬から5月上旬に最も活発になっていました。その後5月中下旬にかけて不活発になった後に,6月に再度活発になりました(図1)。最初のピークはほかの多くの鳥で見られるなわばり形成やつがい形成のためのピークと思います。ツグミ類の繁殖は1か月程度なので,2回目のピークはちょうど1回目の繁殖が終わったころに当たるので,そうしたことが関連しているのかもしれませんが,よくわかりません。 図1.秩父のアカハラのさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずる時間帯 アカハラのさえずりは日の出前がピークでその後減少しました。さえずりの活発な時期は日の出後もしばらくさえずりますが,不活発な時期になると日の出前後しか鳴かなくなってしまいます。 図2.志賀高原と秩父のアカハラのさえずり頻度と日の出からの時刻の関係

トラツグミ:夜行性ゆえ? 年により異なるさえずりのピーク

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 トラツグミは夜にヒーと高い声で鳴く鳥です。そのため,調査開始前の時間帯に鳴いていても調査開始時刻には鳴きやんでしまうことが多いのですが,日の出後も鳴き続けることもあり,そのような日の記録が,以下のまとめに反映されています。おそらく,さえずりの活発な時期に,日の出後も鳴き続けるのではないかと思うのですが,そうではなく,以下のまとめがさえずりの活発さを反映していない可能性もあります。 さえずり頻度の季節変化 トラツグミのさえずりの活発な時期やその変動は,年により大きく異なっていました。図1からなんとなく読み取れますが,4月と6月にピークがある年が多く,それに加えて5月にもピークがある年やいずれか1回しかピークがない年などがありました。前述したように,トラツグミは夜間にさえずる鳥で,本調査の結果はその時間帯以外の調査結果なので,どうしてもわかりにくくなってしまうのかと思います。また,これがトラツグミの繁殖ステージの何にあたるのか,についてもよくわかりません。 図1.秩父のトラツグミさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずる時間帯 調査期間内では日の出前の時刻にもっともよく記録されました。実際は調査時刻より前の時間の方が活発にさえずっているため,このような結果になったと思います。 図2.秩父のトラツグミのさえずり頻度と日の出からの時刻の関係