投稿

クロジ:日本海側に多い森のホオジロ

イメージ
 クロジは日本海側に多い森林性のホオジロです。日本海側では増加していますが( 植田・植村 2021 ),藪を好む習性もあり,太平洋側ではシカの食圧の影響もあって減少しています。秩父調査地よりやや高標高の位置にある突出峠では,2016年までは記録されていましたが,2017年以降は記録されなくなったしまいました。 さえずり頻度の季節変化 志賀高原のクロジは4月中下旬に初認されました(図1)。その後,5月上旬にかけて,さえずり頻度は増加し,5月中下旬に低下したのちに,再び増加しました。 図1.志賀高原のクロジのさえずり頻度の季節変化(2022-2026) さえずる時間帯 クロジは日の出前から日の出時刻に最も活発にさえずり,その後徐々に減少していました(図2)。 図2.志賀高原のクロジのさえずり頻度と日の出からの経過時刻の関係

カワラヒワ:開けた場所の鳥は日の出時刻にこだわらない?

イメージ
 カワラヒワは草の種子を食べるため,草の多い開けた場所で採食し,それに隣接する疎林で繁殖する鳥です。そのため,秩父のような森林におおわれた場所では記録されず,山中湖でのみ記録されました。 記録頻度の季節変化 カワラヒワの記録は調査がはじまる4月上旬をピークに,その後減少していきました。おそらく調査開始時期より早い時期にピークがあるのだと思われます(図1)。 図1.山中湖のカワラヒワの記録頻度の季節変化(2013-2026) 記録される時間帯 カワラヒワは日の出前にはほとんど記録されず,時間経過とともに記録率は高くなりました(図2)。ヒヨドリ,コムクドリ,ホオジロなど開けた場所に生息するほかの鳥も,こうしたパターンを示していました。日の出から時間が経つと鳴きだし,さえずりを打ち消してしまうエゾハルゼミが開けた場所にはいないとか,日の出直後に鳴かなくても良い理由があるのかもしれません。 図2.山中湖のカワラヒワの記録頻度と日の出からの時刻の関係

ルリビタキ:活発にさえずり続ける鳥,しかし急に鳴かなくなる時期も

イメージ
 ルリビタキは亜高山帯の優占種です。志賀高原では,たくさんの個体がさえずって,声が反響して個々のさえずりの聞き取りが難しいほどです。 さえずり頻度の季節変化 4月上旬の志賀高原は積雪に覆われているためか,年によってはルリビタキの声がまだ聞かれないことがあります。そんな年でもまもなく,ルリビタキが活発にさえずるようになり,その活発さはシーズンを通して維持されます(図1)。ただ,5月下旬から6月上旬にぱったりルリビタキが鳴かなくなる日が何日も続くことがあります。ヒナへの給餌で忙しくて鳴かないのでしょうか? この時期のルリビタキに何が起きているのか知りたいところです。 図1.志賀高原のルリビタキのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずる時間帯 ルリビタキは日の出前から日の出1時間後まで活発にさえずり続けていました(図2)。 図2.志賀高原のルリビタキの記録頻度と日の出からの経過時刻の関係

キビタキ:密度でさえずりパターンが異なる?

イメージ
 キビタキは夏鳥でもっとも分布の広い鳥で,全国鳥類繁殖分布調査の2010年代の調査では,記録メッシュ数で7位でした( 植田・植村 2021 )。1970年代と1990年代には上位10位には入っておらず,分布も拡大しています。 聞き取り調査でも3か所すべてで記録されており,いちばん標高の低い山中湖でもっとも高密度に生息していました。 さえずり頻度の季節変化 キビタキは標高のもっとも低い山中湖には4月中旬に渡来し,秩父には4月下旬,志賀高原には4月下旬か5月上旬に渡来しました(図1)。渡来後すぐに活発にさえずるようになり,密度の高い山中湖では調査終了までその活発さを維持しましたが,密度の低い秩父では6月に入ると,志賀高原では6月後半には,さえずりが不活発になっていきました。 図1.各調査地のキビタキのさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずる時間帯 さえずる時間帯にも密度は影響するようで,山中湖では日の出前から活発にさえずっていましたが,秩父や志賀高原では日の出30分後にかけて,徐々にさえずりは活発になりました(図2)。 図2.キビタキのさえずり頻度と日の出からの経過時刻の関係

コルリ:シカの影響で秩父ではいなくなった

イメージ
 コルリは,チッチッチッ・・・・・ チーチュビチーチュビチなどと聞こえる声でさえずります。チッチッチッ・・・という前奏は他の鳥にはない特徴で,ここで簡単に聞き分けることができます。しかし,距離が遠いと前奏は聞こえにくいので,「前奏がないからコルリじゃないね」とは言えないので,識別の際には注意が必要です。 このコルリの記録が秩父では激減し,2020年代になってからは,年に数回記録される程度になってしまいました(図1)。藪に生息するコルリの生息地がシカの食圧でなくなってしまったのが原因と思われます。同様にウグイスもいなくなっていますが,ウグイスの方がかなり早くいなくなりました。コルリが最後までいなくならない傾向は他地域でも認められており( 植田 2023 ),コルリの方がシカの食圧に強いのかもしれません。ただ,この残っている期間の繁殖成績がきわめて低いなど,生息しているだけで大きく影響を受けていて,強いわけではない可能性もあります。 図1.秩父のコルリの記録率の年変動 さえずり頻度の季節変化 志賀高原へはコルリは4月下旬から5月上旬に渡来します。その後さえずりは活発になっていき,6月上旬をピークに低下していきました(図2)。 図2.志賀高原のコルリのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずる時間帯 コルリはややさえずりの開始時刻の遅い種で,日の出前の時間帯から日の出30分後に向けて徐々に活発になっていきます。そしてその後安定的に推移していました(図3)。 図3.志賀高原と秩父のコルリのさえずり頻度と日の出からの時刻の関係

アカハラ:低標高で減少,高標高で増加?

イメージ
アカハラはやや寒冷なブナ林等の森林に生息する鳥です。調査地の中では秩父では優占種になっています。以前は山中湖にも多く生息していたそうですが,現在はほとんど記録されず,記録されるツグミ類はアカハラよりも暖かい森林に生息するクロツグミとなっています。 全国的にも寒冷な森林に生息する種が減少する傾向があり,アカハラでは低標高な場所で分布が縮小していることが全国鳥類繁殖分布調査の結果からわかっています( 植田 2023 )。また,志賀高原では年により記録されることのある鳥でしたが,2026年には,はじめて繁殖期を通して記録されました。秩父調査地に隣接する志賀高原と近い標高の突出峠では2017年から記録されるようになり,その後定着して現在は優占種となっています。志賀高原でも今後定着するかもしれません。 さえずり頻度の季節変化 アカハラのさえずりは4月中旬から活発になり4月下旬から5月上旬に最も活発になっていました。その後5月中下旬にかけて不活発になった後に,6月に再度活発になりました(図1)。最初のピークはほかの多くの鳥で見られるなわばり形成やつがい形成のためのピークと思います。ツグミ類の繁殖は1か月程度なので,2回目のピークはちょうど1回目の繁殖が終わったころに当たるので,そうしたことが関連しているのかもしれませんが,よくわかりません。 図1.秩父のアカハラのさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずる時間帯 アカハラのさえずりは日の出前がピークでその後減少しました。さえずりの活発な時期は日の出後もしばらくさえずりますが,不活発な時期になると日の出前後しか鳴かなくなってしまいます。 図2.志賀高原と秩父のアカハラのさえずり頻度と日の出からの時刻の関係

トラツグミ:夜行性ゆえ? 年により異なるさえずりのピーク

イメージ
 トラツグミは夜にヒーと高い声で鳴く鳥です。そのため,調査開始前の時間帯に鳴いていても調査開始時刻には鳴きやんでしまうことが多いのですが,日の出後も鳴き続けることもあり,そのような日の記録が,以下のまとめに反映されています。おそらく,さえずりの活発な時期に,日の出後も鳴き続けるのではないかと思うのですが,そうではなく,以下のまとめがさえずりの活発さを反映していない可能性もあります。 さえずり頻度の季節変化 トラツグミのさえずりの活発な時期やその変動は,年により大きく異なっていました。図1からなんとなく読み取れますが,4月と6月にピークがある年が多く,それに加えて5月にもピークがある年やいずれか1回しかピークがない年などがありました。前述したように,トラツグミは夜間にさえずる鳥で,本調査の結果はその時間帯以外の調査結果なので,どうしてもわかりにくくなってしまうのかと思います。また,これがトラツグミの繁殖ステージの何にあたるのか,についてもよくわかりません。 図1.秩父のトラツグミさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずる時間帯 調査期間内では日の出前の時刻にもっともよく記録されました。実際は調査時刻より前の時間の方が活発にさえずっているため,このような結果になったと思います。 図2.秩父のトラツグミのさえずり頻度と日の出からの時刻の関係

コムクドリ:4月中下旬と6月上中旬に活発に鳴く

イメージ
 コムクドリは疎林に生息する鳥で,山中湖に接していて開けた場所のある山中湖の調査地でのみ記録されました。そしてその記録頻度は年々増加していました(図1)。 図1.山中湖のコムクドリの記録頻度の変変動 記録頻度の季節変化 コムクドリは夏鳥で,4月上中旬に初認されました。その後,記録頻度は増加し,4月中下旬ピークに達したのちに,5月下旬にかけて低下し,6月に入ると再び増加しました(図2)。4月中下旬のピークは渡来したコムクドリが巣穴をめぐって争うためと思われ,それが落ち着いて低下するのだと思われます。6月上中旬のピークは巣立ち前後にあたるので( 小池 2007 ),親の動きが活発になったり,家族群が騒いだりといったことが関係しているのかもしれません。 図2.山中湖のコムクドリの記録頻度の季節変化(2013-2026) 記録される時間帯 日の出頃にコムクドリが記録されることはほとんどなく,ほかの鳥のさえずりが不活発になったころから,コムクドリの声が聞こえることが多くなりました(図3)。 図3.山中湖のコムクドリの記録頻度と日の出からの経過時間との関係

キバシリ:春,早朝に聞かれる高い声のさえずり

イメージ
 キバシリは近年分布拡大が顕著な鳥の1つで,特に低標高へ分布を拡大しています( 植田・植村 2021 )。聞き取り調査の調査地では秩父で普通に記録されていますが,志賀高原や山中湖ではときどき記録されるのみで,現時点では増加傾向にはありませんでした。後述するように,早い時期にさえずらなくなり,また,そのさえずりもキクイタダキやミソサザイとの識別に迷うと何人もの人から聞くので,実際にはわかっている以上に広い範囲に生息しているのではないかと想像しています。 さえずり頻度の季節変化 キバシリもゴジュウカラと同様,早春にさえずりが聞かれる鳥で,2月に越冬期の鳥類相の調査に行くと,さえずりが聞くことがよくあります。そのため,ゴジュウカラと同様に,調査開始時をピークに低下するようなパターンかと思っていたのですが,それよりやや遅く,4月下旬まで高い頻度を維持するというパターンを示していました(図1)。そして,その後減少して,5月下旬にはほとんど聞かれなくなりました。 図1.秩父のキバシリのさえずり時期の季節変化(2011-2026) さえずる時間帯 キバシリのさえずりは,日の出時刻をピークにその後,急激に低下しました(図2)。早朝に調査をしないと,地味で目立たない鳥ですし,記録できる確率は大きく下がりそうです。 図2.秩父のキバシリのさえずり頻度と日の出からの経過時間との関係

ゴジュウカラ:標高の高い場所ではさえずりが不活発になる時期が遅くなる?

イメージ
 ゴジュウカラはブナ林に多い鳥です。全調査地で記録はあるものの,ブナ林に位置する秩父で多く記録され,志賀高原や山中湖では時折記録されました。 さえずり頻度の季節変化 ゴジュウカラは早春にさえずりの活発な鳥で,秩父では調査開始後すぐにさえずり頻度のピークがくる年や,それ以前にピークがあったと考えられる年がありました。そして,その後,さえずり頻度は低下していき,5月中下旬には,あまりさえずらなくなってしまいました(図1)。秩父の調査地の少し標高の高い位置にある突出峠でも,2009年から2026年にかけて,5月にICレコーダを設置して調査しているので,その結果と比べてみると,さえずりが不活発になる時期は突出峠の方が遅いようでした。標高により繁殖時期が違うためにこうしたことが生じているものと思われます。同じように北の方がさえずり時期が遅いこともわかっています( 植田 2023 ) 図1.秩父と近接する標高の高い突出峠でのゴジュウカラのさえずり頻度の比較 さえずる時間帯 ゴジュウカラのさえずりは,日の出前から1時間後まで,特に増減傾向はなく,一定に推移しました(図2)。 図2.秩父のゴジュウカラのさえずり頻度と日の出からの経過時刻との関係

ミソサザイ:6月下旬に再度さえずりが活発に

イメージ
 ミソサザイは沢沿いに多い鳥です。それとは別に,亜高山帯の森林にも多く生息しいて,志賀高原にも生息していました。 さえずり頻度の季節変化 早春の沢を歩くと,まだ雪の残る中,ミソサザイが活発にさえずっているのが聞かれます。志賀高原でも調査を開始する4月上旬が最も活発にさえずっており,さえずりのピークはもっと前にあるのではないかと思われます(図1)。その後,さえずりの頻度は6月上旬にかけて下がっていくのですが,その後再び活発になっていました。 ミソサザイは一夫多妻で繁殖する鳥です。志賀高原で行なわれた羽田・小堺(1971)の調査によると,1969~1971年の3年間で,一夫四妻(1例),一夫三妻(1例),一夫二妻(3例),一夫一妻(4例)が記録されました。そのためさえずり期間が長く,調査の後半でも再度活発になっているのかもしれません。 図1.志賀高原のミソサザイのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずる時間帯 ミソサザイは早朝からさえずる鳥で,日の出前が一番さえずりが活発でした。日の出にかけて少し低下しましたが,その後は,ほぼ同じ頻度で推移し,大きなさえずり頻度の低下はありませんでした(図2)。 図2.志賀高原のミソサザイのさえずり頻度と日の出からの経過時間の関係

メジロ:秩父に定着した照葉樹林の鳥

イメージ
 メジロは照葉樹林に多い南方系の鳥です。ヤマガラやヒヨドリなどと同様に,分布を北上/分布標高を上昇させています。山中湖には調査開始当初から生息していましたが,秩父では近年定着しました。いずれの調査地でも記録率は増加傾向にあります(図1)。 図1.秩父と山中湖のメジロの記録率の経年変化 さえずり頻度の季節変化 4月上旬はまだ山中湖のメジロはさえずっていないことが多いですが,その後,さえずりが聞かれ始めると,そのさえずり頻度は,二山型になる年もありましたが,全体的にはシーズンを通して大きな変化はありませんでした。 図2.山中湖のメジロのさえずり頻度の季節変動(2013-2026) さえずる時間帯 日の出前をピークに,その後,さえずり頻度は大きく減少しました。照葉樹林で観察していると,日の出前,すこし明るくなってくるとメジロが一斉にさえずりだします。密度の低いところでは,さえずりが活発になる時間帯が遅くなっている可能性がいくつかの種で示唆されていますが,本調査地のメジロの密度は照葉樹林よりかなり低いですが,日の出前にさえずる行動は変わらないようです。 図3.メジロのさえずり頻度と日の出からの経過時刻との関係

ムシクイ類:生息標高に応じた初認時期の違い

イメージ
 日本の森林に生息するムシクイ類は,低標高から生息しているセンダイムシクイ,高標高の亜高山帯に生息するメボソムシクイ,その中間で特に沢沿いに多いエゾムシクイがいます( 植田 2019 )。聞き取り調査の調査地では志賀高原には3種とも生息し,山中湖にはセンダイムシクイが生息しています。山中湖のセンダイムシクイは記録頻度が増えていて(図1),それに伴い,ムシクイ類に托卵するツツドリの声もよく聞かれるようになりました。 図1.山中湖のセンダイムシクイの記録率の年変化 さえずり頻度の季節変化 ムシクイ類は夏鳥ですが,生息する標高も影響して,センダイムシクイ>エゾムシクイ>メボソムシクイの順に聞かれるようになります。標高の低い山中湖ではセンダイムシクイのさえずりは4月中旬に活発になりますが,志賀高原で活発になるのは4月下旬になってからです(図2)。また,志賀高原でのセンダイムシクイとエゾムシクイは,活発になる時期こそセンダイムシクイの方が早いものの,初認日で比べると,14年のうち,センダイムシクイが早かったのが5年,エゾムシクイが早かったのが5年,同日が3年と差がなく,近年はエゾムシクイが早い年が目立ちます(図2)。 季節変化はどの種も初認後,活発になり,ピークを付けた後に徐々に不活発になっていきました。不活発になる時期も低標高の山中湖の方が早い傾向にありました。 図2.志賀高原のセンダイムシクイ,エゾムシクイ,メボソムシクイおよび山中湖のセンダイムシクイのさえずり頻度の季節変動(2012-2026) さえずる時間帯 ムシクイ類は3種とも日の出前のさえずり頻度が一番低く,その後,徐々に上がっていきました。エゾムシクイは,日の出前の頻度も比較的高いため,日の出後もそれほど大きく上昇せず,比較的安定していましたが,山中湖のセンダイムシクイと志賀高原のメボソムシクイは日の出前の頻度が極めて低く,時間とともに大きく上昇しました。 図3.ムシクイ類のさえずり頻度と日の出からの経過時刻との関係

ヤブサメ:日の出前がさえずりのピーク

イメージ
 ヤブサメは下藪のある森に生息する鳥で,聞き取り調査地のなかでは,志賀高原でのみ記録されました。 さえずりの季節変化 ヤブサメは日本には夏鳥として渡来し,4月18日の初認が14年間のうち5年と,もっとも多く記録されました。さえずりが活発になるのは,4月下旬で,5月上旬がピークで,その後,急激に低下しました(図1)。 図1.ヤブサメのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずりの聞かれる時間帯 近縁のウグイスやムシクイ類は日の出頃はあまりなかない鳥です。それに対してヤブサメは日の出前をピークにその後,頻度が下がるというほかの種とは異なるさえずりパターンを示しました(図2)。ヤブサメは特に渡来初期には夜にもさえずる習性があるので( 宮脇 1997 ),こうしたさえずりパターンを示すのかもしれません。 図2.ヤブサメのさえずり頻度と日の出からの時間との関係

ウグイス:生息環境の幅が広いにもかかわらずシカの影響で最初に減少

イメージ
 ウグイスは南西諸島から北海道まで,標高では低地から高山まで,環境も住宅地から森林まで,さまざまな場所に生息する日本で最も分布の広い鳥です。全国鳥類繁殖分布調査では,1970年代,1990年代,2021年代すべての調査においてメッシュ数は不動の1位です( 植田・植村 2021 )。そんなウグイスですが,近年は,シカの増加とその食圧による藪の減少により,各地で個体数が減少しています。聞き取り調査の調査地でも,秩父では調査開始前にほぼいなくなってしまっており,山中湖でも,近年,記録が激減しています(図1)。 図1.山中湖のウグイスの記録率の経年変化。近年急激に減少し,それにあわせてウグイスの托卵するホトトギスも定着しなくなってしまった。 シカの食圧の影響を受ける種には,コルリ,コマドリ,ムシクイ類,ソウシチョウなどほかにもいますが,最初に影響を受けるのは,ウグイスであることが多いです。前述したように生息環境の幅が広いのに,シカの食圧に脆弱なのは不思議な気がします。もしかすると,ほかの種は生息環境の幅が狭いだけに,シカの食圧で環境が悪くなっても,ほかに行く場所がないので,我慢して生息するのに対して,ウグイスはほかにも行ける場所があるので,あっさりと移動してしまうのかもしれませんね。 さえずりの季節変化 ウグイスのさえずりは山中湖では4月中旬から,志賀高原では4月中下旬から活発になります(図2)。ウグイスのさえずりの開始時期は冬からの積算気温である程度推測できるので( 太田・植田 2020 ),気温の違いが影響しているのだと思います。 山中湖は減少傾向にあることが影響していて,活発になった後の季節変化には大きなばらつぎがありますが,志賀高原を見ると,その後は,活発なまま推移します(図2)。ウグイスは一夫多妻制で( 濱尾 2007 ),雄は一度つがった後も,次の雌を獲得しようとさえずり続けるので,このようなパターンになるのでしょう。 図2.ウグイスのさえずり頻度の季節変化(2012-2026) さえずりの聞かれる時間帯 ウグイスは早くからさえずるツグミ類などが鳴き始めてしばらくすると声がするイメージですが,その通り,日の出頃にピークになり,その後,それほど頻度は下がらず,活発なまま推移します(図3)。 図3.日の出からの経過時間とウグイスのさえずり頻度との関係(201...

ヒヨドリ:季節とともに記録率が高くなる

イメージ
 ヒヨドリはなんとなく森の主要種のような気がしていませんか? でも実際は開けた温暖な森の鳥で,標高の高い森に覆われたような場所にはあまり生息していません。そのため,聞き取り調査の調査地のうち,志賀高原や秩父ではほとんど記録されず,山中湖でのみ記録されました。ただ,近年,分布拡大が見られており( 植田・植村 2021 ),将来は志賀高原や秩父でも記録されるようになるかもしれません。なお,温暖な森の鳥なので,冬は,高標高の場所ではより記録されにくそうに感じますが,実はそうではなく,冬には秩父での記録が近年増えています。北の方で繁殖している個体が越冬のため南下してきて,そうした個体が記録されるのでしょうね。 記録頻度の季節変化 ヒヨドリは4月上旬にはあまり記録されませんが,その後,緩やかに記録頻度は上昇し,調査終了時点がピークとなりました。6月に入ると多くの鳥の記録率は下がるので,このような季節変化を示す種はあまりいません。 ヒヨドリがこういうパターンを示す種なのか,それとも山中湖の特性なのかはよくわかりません。まだ定着していないような種(たとえば秩父でメジロは現在は定着しているけれども,まだ定着していなかった調査初期の頃のメジロ)や,ほぼいなくなってしまった種(たとえばシカの影響で激減した最近の山中湖のウグイス)では,繁殖期の前半ではほとんど記録されず,後半に記録されます。おそらくほかの場所で定着できなかったり,繁殖に失敗した個体が後半にやってきて定着を試みるのではないかと思います。ヒヨドリは前述したように,寒冷な森では少ない種で徐々に増加しています。山中湖も定着はしているものの,数を増やしているような場所で,後半に,ほかの場所から個体が流れ込んできている,なんてことも生じているのかもしれません。 図1.山中湖のヒヨドリの記録頻度の季節変動(2013-2026) 記録される時間帯 ヒヨドリの記録率は日の出前が一番低く,その後,徐々に上がっていきました。 図2.山中湖のヒヨドリの記録率と日の出からの経過時刻との関係

ヒガラ・ヤマガラ・コガラ:種の特性や密度や標高がさえずり頻度に影響?

イメージ
 カラ類は標高や環境によって主要な生息種が異なります( 植田・植村 2021 )。シジュウカラは低標高の開けた林を主要な生息地にし,密度は低いものの,高標高の森林まで分布する最も分布の広い種です。ヤマガラは暖帯の森林を主要な生息地にしているため低標高の森の主要種になっていて,近年高標高の林まで分布を拡げています。志賀高原ではまだ定着していませんが,山中湖と秩父では定着していて,記録は増加傾向にあります(図1)。そしてヒガラとコガラは高標高の森に生息する種で,特にヒガラは標高の高い森では最優占種となる鳥です。こうした特性を反映して,カラ類のさえずりパターンには違いがありました。 図1.秩父と山中湖のヤマガラの記録頻度の変化 さえずりの季節変化 ヒガラは高頻度で,シーズンを通してよくさえずり,ヤマガラは最もさえずり頻度が低く,コガラは5月上中旬をピークにその後,さえずり頻度低くなるという違いがありました(図2)。そして,それぞれの種の調査地間の違いには,標高や密度が影響していそうなパターンが見られました。 ヒガラの4月上旬のさえずり頻度が志賀高原が秩父より低かったは,低温や積雪により繁殖開始時期がやや遅いのを反映していそうです。また,山中湖でほかの2か所より早い5月中旬にさえずり頻度が下がりましたが,密度が低いため,競い合ってさえずることが少なく,早めに不活発になっていくこと,そして,もしかすると,低標高のために早めに繁殖が一段落することが影響しているのかもしれません。 ヤマガラは山中湖では5月に入るとさえずり頻度が落ちました。これもヒガラの山中湖と同様に秩父よりも密度が低いため,競い合ってさえずることが少なく,早めに不活発になっていくこと,そして,もしかすると,低標高のために早めに繁殖が一段落することが影響しているのかもしれません。 コガラのさえずりが不活発になる時期が志賀高原の方が遅かったのも標高が影響しているのだと思われます。 図2.カラ類のさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずりの聞かれる時間帯 コガラは日の出時刻をピークにその後急激に低下,ヒガラは日の出しばらく後をピークに,その後は低下するものの,高頻度のまま推移し,ヤマガラは場所によって異なっていたものの,密度の高い秩父では日の出前がピークで,その後急激に低下するといった種による違いが...

カケス:無人録音では普段と違う声がよく聞かれる

イメージ
 カケスは英名がJayというだけに,「ジェー」と聞こえる声で鳴きます。また,猛禽類など様々な声を真似たりもします。 聞き取り調査では,そのほかに,「 巻き舌 」と呼ぶ声や「 コケッ音 」とか呼んでいる声が聞かれ,野外観察ではいちばんよく聞く「ジェー」という声よりもこちらの方が多く聞かれました。そしてさらに猛禽の真似を聞くことも「ジェー」という声を聞くことより多いのも特徴的でした。「ジェー」という声は人などを警戒する声で,それ以外の声は,人が近くにいないリラックスしているときの声なんですかね。ちなみに猛禽が出現すると,猛禽の真似をします。あれは,猛禽に対して気付いているぞアピールなのでしょうか? それとも条件反射? カケスの記録は志賀高原や秩父では増減傾向はありませんでしたが,山中湖では減少傾向にありました(図1)。 図1.山中湖のカケスの記録率の年変動 カケスの記録頻度の季節変化 カケスの記録率は4月中下旬がピークでその後は緩やかに低下していきました(図2)。 図2.カケスの記録頻度の季節変化(2011-2026) 記録される時間帯 カケスの記録される時間帯は場所によって異なり,志賀高原は日の出をピークに徐々に記録率が下がっていったのに対し,秩父は日の出頃が最も記録率が低く,その後,上昇していきました(図3)。山中湖では一定の傾向は見られませんでした。なぜこんなに場所によって違うのかはよくわかりません。 図3.カケスの記録頻度と日の出からの経過時間の関係

キツツキ類:増加している大型キツツキ

イメージ
 志賀高原,秩父,山中湖の調査地には,オオアカゲラ,アカゲラ,アオゲラ,コゲラが生息しています。コゲラは明確に識別できますが,ほかのキツツキ類は,アオゲラの「ピョー」という声を除けば,鳴き声もドラミングも,オオアカゲラっぽいとかは, 大まかにはわかるのですが ,完ぺきな自信はないので,コゲラ,大型キツツキの区分でまとめました。なお,各調査地での記録率は,コゲラには明確な傾向はなく,大型キツツキは秩父と山中湖で増加傾向にありました(図1)。大型キツツキの増加は,全国鳥類繫殖分布調査でも示されています( 植田 2023 )。 図1.大型キツツキ類の記録率の年変動 記録頻度の季節変化 コゲラも大型キツツキも4月は記録頻度が高く,その後,徐々に低下しました。大型キツツキは最後までその低下が続いたのに対し,コゲラは6月の下旬に頻度が再び高くなった点が異なっていました(図2)。断言はできませんが,この時期は3羽以上の声がしたり,巣立ちビナっぽい感じの声が混ざるなど家族群かな,と思われるコゲラがその頃に聞かれたので,そのために鳴くことが多くなり,記録が増えたのかもしれません。 図2.コゲラと大型キツツキの記録頻度の季節変化(2011-2026) 記録される時間帯 コゲラは日の出前後はほとんど記録されず,日の出後しばらくしてから,記録されることが増え,その後安定しました(志賀高原のみピークを付けた後減少)。それに対して,大型キツツキは日の出直後あたりをピークに,その後減少するなど,コゲラよりも早くから記録されました(図3)。 図3.コゲラと大型キツツキの記録頻度と日の出からの経過時間の関係 コゲラの記録にドラミングが占める割合は低く,全体では3.6%に過ぎませんでしたが,大型キツツキの記録にドラミングが占める割合は高く,日の出直後には70%を超えており,記録率と同様に,その後,低下していきました(図4)。コゲラのドラミングは, か弱い音 で,遠くまでは聞こえません。そのため,コゲラドラミングは聞き落としており,大型キツツキは記録できているなど,その特性の違いが,ある程度は記録頻度の時間変化に影響してしまっているかもしれません。 図4.記録にドラミングが占める割合の大型キツツキとコゲラの違い

アオバト:全調査地で増加傾向に

イメージ
 「オアオ~ オアオ~」何とも不思議な 特徴的な声 を聞く機会が増えています(図1)。この増加は全国的なもので,全国鳥類繁殖分布調査の結果でも1970年代,1990年代,2010年代と分布を拡げています( 植田・植村 2021 )。 図1.各調査地のアオバトの記録率の変変動と秩父の記録頻度の年変動 さえずりの聞かれる時期 アオバトは秩父では,調査初日の4月1日から聞かれることもありますが,4月中旬以降から聞かれることが多く,4月16日の初認が最も多く記録されています。その後,徐々に聞かれる頻度は多くなり,5月下旬から6月上旬がピークとなっていました(図2)。 小鳥類よりも遅い時期まで活発ですが,キジバトのようにシーズンを通して活発というわけではないようです。アオバトの繁殖生態はよくわかっていませんが,キジバトのように何度も繁殖というわけではないのかな,と思います。 図2.秩父のアオバトのさえずり頻度の季節変化(2011-2026) さえずりの聞かれる時間帯 アオバトは,日の出前にはあまり鳴いておらず,その後活発になり,ピークになったあと不活発になっていきました(図3)。日の出後のピークになるまでの時間は山中湖,秩父,志賀高原と標高順に早くなっていました。これに何か意味があるのか,それとも偶然なのかは,他地域の状況がわかれば見えてくるかもしれません。 図3.アオバトのさえずりの活発さと日の出からの経過時間との関係